●区域外再送信・・・
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CATVは、Community Antenna TVという名の通り、共同受信が発展したものです。
要するに、テレビが映らない地区は、テレビが上手く受信できる場所に共同でアンテナを
立てて、各家庭に配りましょうってな具合ですね。日本初のCATVは、草津で始まったと
いわれています。その延長に区域外再送信・・・いわゆる免許地以外の地区の放送局を
受信しCATVで再送信しようっていうものです。
具体的にどうすれば再送信ができるかという手続きは、まず「自エリア局に同意を得る」
ということと、「再送信局に承諾を得る」ということが必要で、最後に管轄の総合通信局に
届出るといった具合のようです。また再送信をするエリアの再送信をしない放送局に対し、
「限定再送信通知」というのを送る場合もあるようです。
ただCATVの歴史の古い地域は、もともと既に開局していた放送局の数が少なかったり、
地元局も難視聴だったりして、「地元局に同意を得る」という項目は飛ばしてよいようです。
現実に同じ系列が2局再送信されている地域は、ほとんど「同意を得ずに再送信している」
ってことですね。再送信相手局が「OK」といえば、再送信してOKってことになります。
しかも基本的に再送信を要請された局は、要請してきたCATV局のある地域のテレビ局と、
「番組販売」等の関係がなければ、再送信許可を出すものと思われます。これは、再送信を
許可することで、マーケティングエリアが単純に広がるわけですから、テレビ局にとっても
広告収入的に非常に好都合なわけですね。とくに、横浜のTVKテレビは、衛星を使って
高知などの全く縁もゆかりもない地域にまで再送信を行っていました。
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●テレビ局の難色っていうのは?
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まず再送信をしたい局の同意が得られない場合ですが、これは「番販」という、放送局が
ローカル局に番組を販売して収入を得ているということが挙げられそうです。
代表例は「テレビ東京」です。この局は、ネットワーク化するつもりのなかった時代に、
あちこちに再送信同意をしたものと思われます。しかし、いざネットワーク化してみると、
ネット負担金が重荷になってきて、結局ネット局のない地域に番組を販売して経営を維持し
ているわけです。だから番組を販売している局のある地域で、再送信があると、販売している
相手の放送局に申し訳ないってことで、再送信に同意しないわけです。今はキー局だけで
止まっていますが、キー局の鶴の一声で、系列局も同じ対応になる可能性もあります。
次にエリア内の局が難色を示す場合ですが、、局が増えるとそれだけ見る人が減って
しまうわけです。そうなると当然「広告収入」も減ってしまうので、困るわけですね。
とくに同じ系列の局が再送信されていたりすると、キラーコンテンツである系列ネットの
時間帯に、視聴者が同系列他局に流れてしまい、自局のスポットCMを見てもらえなくなる
わけですね。スポーンサーが逃げる要因にもなります。よって、放送局はCATVの区域外
再送信に対していい顔はしません。
このような地域は宮崎や熊本などが挙げられますが、こういった地元局が難色を示す
ケースは、ただ単に「放送局が再送信同意をしない」というよりか、資本関係が密接に
関わっているようです。ケーブル局はテレビ局や新聞社、地方自治体が株主であることが
非常に多く、こういった資本関係で圧力がかかることがほとんどのようです。広島市では、
表向きは「設備に費用がかかる」として、TSCの再送信をしていませんが、実際は放送局の
意思による所が大きいですし、長野市では、個人レベルでも在京局が受信できるにも
関わらず、TX以外の在京局再送信は、地元の財界勢力に斬殺されました。
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●郵政省大臣お墨付き再送信
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これも有名な話ですが、松江のマーブルテレビがサンテレビを再送信しようとした時に、
サンテレビが再送信の同意を出さなかったんですね。松江といえば、遠距離受信で
サンテレビが映る地域なんですが、サンテレビが山陰の局に番組を販売していて、
山陰の局もマーブルの区域外送信に難色を示していた為に、サンテレビがこれを
配慮していたんですが、郵政省が「受信できるのに、再送信を拒む理由がない」として
サンテレビに再送信の同意に応じる旨の命令書を出したしたそうです。
似たような例に、高知ケーブルテレビの「テレビせとうち」再送信があります。高地では
テレビ朝日系の再送信がないのに、テレ東が映るという奇妙なことになっています。
テレビせとうちの再送信が異例だというのが良く分かりますね。
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●放送局乱立時代
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そもそも地上波再送信が頻繁に行われるようになった理由は、「民放5系列」が確立されて
いなかった時代にさかのぼります。NETやテレビ東京が、ここまで成長すると予想のできな
かった所もありますが、80年台後半のバブル期による所が大きいですね。バブル景気に乗り
在京局が沢山系列局を作りました。とくに朝日系は、新聞は発行部数全国2位なのに、系列
局は10局ぐらいしかなかったため、やたらと乱立させました。開局年表をみると、●●朝日
放送といった局は、ほとんど88年以降に開局しています。
00 |
県名 |
ch |
佐賀 |
32 |
徳島 |
40 |
茨城 |
34 |
福井 |
23 |
宮崎 |
21 |
沖縄 |
30 |
(’97.5時点) |
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000 |
左の表は、チャンネルの割り当てがあったのに、開局しなかった
県の一覧表です。当時の赤本を見ていると、徳島や沖縄は、
開局寸前まで行っていたようですね。佐賀・徳島といった地域は
やはり共聴やCATVなど、何らかの形で他地域のテレビ局を
見ている世帯が、ほぼ100%に達するのか、結局開局には至り
ませんでした。茨城・福井・宮崎は、一本化調整に難航が続いた
せいとされ、沖縄やTXN仙台など、バルブ崩壊によって、夢を
絶たれてしまったというケースもあるようです。ちなみに、97年の
5月にチャンネルの割り当てがあり、開局に至ったのは、とちぎ
テレビだけでした。現在はチャンネル割り当てはすべて取り消され
デジタル完全移行後少なくとも10年は新規開局はないでしょう。
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●都会と地方の情報格差について考えてみる
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さてここで、問題になってくるのが「地上波デジタル」の再送信問題である。2004.02月現在
デジタル放送を送信している放送局は、免許地以外へのCATVに対し、再送信の同意を
していないようです。区域外再送信で系列局が被る地域は、今後も再送信が認められない
可能性も出てきました。
ローカル局は、一日に半分はキー局のネット受けの番組を放送しているといわれています。
この時間が長いほど「キー局の中継局」と化しているわけですね。ではローカル局の存在
意義って何?って話になります。
たとえば、アニメ番組に話を限定すると、首都圏の民放では約70本の新番組が放送されて
いまして、地上波で放送される新作のほぼすべてが視聴可能です。しかし、福岡の地上波
民放で見られる作品は、たったの50本、さらに民放4局地帯では約25本〜30本と、半分以下
になってしまいます。本数だけ見ると、明らかに地域格差があります。まあこれは、現在の
アニメの資本回収の仕組みと、放映権の枠売り制度せいでもあるので、一概には言えま
せんが、情報格差の例ですね。これは深夜番組にもいえることで、地方ほどテレビ局の
終了時間が早く、あってもニュースフィーラーくらいのものです。それに比べ、東名阪では、
どの局もほぼ終夜放送が実施されています。
さて「こんな日本に誰がした?」って話になるんですが、答えは簡単。道県単位免許制を
敷いた郵政省が悪いんです。「マスメディア集中排除規制」っていう聞こえのいい言葉を
巧みに叫び、経済力のある場所を広域放送圏にして、経済力のない地域を県単位制の
免許にしました。北部九州や北陸など、明らかに広域放送にすべき所も、県単位区分にし、
経済力に富んでる地域をひとまとめにし、限りある経済力を小分けしました。経済力のない
地域に何個テレビ局が立っても、スポンサーの量は変わらないんですよ。そんでもって、
デジタル化で経営が詰まってきたらから、今さらそれをやろうとしています。NHKを飼って
いるのも郵政省ですし、明らかに間違っていますね。それに追い討ちをかけて「デジタル化」
なんていう無謀な計画を打ち出し、まらそれの開始時期で、地域に格差をつけました。
はじめから国内をいくつかのブロックに分けて、1都市に放送局が集中しないようにすれば、
ある程度地域性が保たれた上に、テレビ局が乱立することもなかったでしょうし、見れない
番組が出るという機会も減っていたでしょう。
地域密着が重要とかよく言いますけど、全国で一番地元に密着してないのって、キー局
なんですよね。NTT中継回線で、キー局の夕方のニュースとかを見ていても、全国に
出ない関東ローカルのニュースが流れることって、かなり少ないですよ。流れても火災が
あった、交通事故があった程度の断片的な情報がチラホラと流れるだけです。「日本
テレビ放送網」構想や、アメリカのように全日本ネットワークを作った方がましだった
かもしれません。
でもこうなってしまった以上、そうそうにローカル局を潰すわけにも行きませんし、
首都圏が有利な状況は、少なくとも向こう30年は変わらないでしょうね。。。
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